日本作家の年収を長者番付で見る【高額納税者】
日本人の読書離れが叫ばれて久しい。
ある調査によれば、現在、日本人の6割は1ヶ月に1冊も本も読まないそうだ。
情報収集なら今やインターネットで…というのが主流。娯楽も多様化し、読書から遠ざかる人が増えるのは止められないだろう。
とはいえ、小説をはじめとする文字媒体がこの世から消え去るというのも考えづらい。今でも本は「売れるものは売れる」。
今回は「夢の印税生活」を送っている(いた)と思われる売れっ子作家たちの年収や納税額を追う試みである。
本記事では、文芸作品が売れに売れていた1975年から、国税庁が長者番付(高額納税者公示制度)を廃止する前年である2004年度までの高額収入・納税作家ランキングを見ていこう。
そこから見えてくる作家や文芸界の栄枯盛衰は興味深い。
*各年度の表の記述は、左から「順位」「作家名」「所得額(1983年度以降は納税額)」。
(文中敬称略)
- 長者番付(高額納税者公示制度)について(1975年~2004年)
- 1975年度
- 1976年度
- 1977年度
- 1978年度
- 1979年度
- 1980年度
- 1981年度
- 1982年度
- 1983年度
- 1984年度
- 1985年度
- 1986年度
- 1987年度
- 1988年度
- 1989年度
- 1990年度
- 1991年度
- 1992年度
- 1993年度
- 1994年度
- 1995年度
- 1996年度
- 1997年度
- 1998年度
- 1999年度
- 2000年度
- 2001年度
- 2002年度
- 2003年度
- 2004年度
- まとめ
長者番付(高額納税者公示制度)について(1975年~2004年)
長者番付の発表形式と所得税最高税率の変遷
1975年から1981年の金額は申告所得額だ。金額がほぼ作家の全収入、と見なして良いであろう。
1982年度の発表からは納税額となっている。時期により所得税の税率が変化しており、作家の実際の収入は分かりづらくなってくる。
一応、所得税の最高税率がどう変遷していったかを記すので参考にしていただきたい。
- 1983年までは所得の75%
- 1984年~1986年は所得の70%
- 1987年・1988年は所得の60%
- 1989年~1998年は所得の50%
- 1999年~2006年は所得の37%
(追記すると、2007年~2014年は所得の40%、2015年以降は所得の45%である)
長者番付の発表が廃止された理由
犯罪抑止の観点
高額納税者の名簿はエリアごとに分け、住所・氏名まで掲載する形で市販されており、簡単に入手可能であり、大規模な図書館などでも閲覧可能となっていた。「税金をたくさん払っている=それだけ金を持っている」というサインになるため、高額納税者の名簿に載ったことによって、団体・企業からの寄附の強要や営業攻勢、勧誘などにさらされる、などの指摘があった。名簿では片仮名で氏名が公表されているものの、特に東京都や大阪府といった都市部の住民ではプロ野球選手、大企業の社長、芸能人など容易に「著名人」であることを推測できる名前が多く見受けられた。
高額納税者の名簿とは、すなわち「億万長者のリスト」でもあるため、格好な「誘拐候補者名簿」として納税者とその親族が窃盗・誘拐などの犯罪に巻き込まれる恐れもあり、実際に神戸では資産家家族が暴力団に殺害されたり、名簿に載っている人の多くの自宅に窃盗が入っているという指摘もあり、プライバシーの観点から廃止を求める声があがっていた。
公示逃れ
一方で、公示による前述のリスクを避けるために、緊急避難的にわざと公示逃れをする人もいた。これは、高額納税者の公示対象が「3月31日までに提出された申告書」に限られることから、所得税額が1,000万円を超えない所得で申告しておいて、4月1日以降に本来の税額で修正申告することで公示を逃れようとするものであった。
この方法では過少申告加算税や延滞税など余分な税金が追徴課税されるが、そのような余分な費用や手間をかけてでも「住所を公表されたくない」などの理由で利用することが多くなっていた。
しかし、マスメディアがこの公示逃れの横行を新聞に掲載したのを受けて、税務当局はそれまで自ら容認していたこの公示逃れを「脱税」と認定するようになってしまった。この税務当局の方針転換は、何が本当に問題なのか理解していないと批判された。
税務技術の普及
高額納税者の公示は「個人」(自然人)の「所得税」額を基準に行われていた。よって、当該個人が法人を設立し、オーナーである法人[注釈 2]に所得を留保・移転および当該法人を用いて親族に所得を分散することにより、節税や公示逃れを「合法的に」行うことが一般化したため、個人としての高額所得者を公示する意味が形骸化していたこともある。
個人情報保護法の全面施行と制度廃止
当初の目的であった「第三者のチェックによる脱税牽制効果」の意義が薄れているという指摘があることや、日本国政府による犯罪の助長になってしまっていること、2005年(平成17年)4月1日から個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)が全面施行されたことを受け、この制度は2006年(2005年度分)から廃止された。
その後は、関西テレビ「たかじん胸いっぱい」や一部の週刊誌では、過去の納税額をもとに(推定)年収ランキングが行われているが、公的機関の所得納税額が公開されないため、公的資料を基にした年収は不明になった。なお、2009年に民主党政権が誕生し、当時の金融担当大臣亀井静香の意向で内閣府令が改正され、有価証券報告書に「年俸1億円以上を支給している企業役員」の個人名と報酬額の開示を義務づけることが2010年3月期から行われており、企業の役員報酬に限定ながらも、部分的に長者番付が復活している。
(以上、Wikipediaより引用)
筆者個人としては、著名人の高い年収を具体的な金額で提示されると「夢があるなあ」と気持ちが高ぶった思い出がある。
高みを目指す若い世代にとっては、一種の精神的な発憤材料になり得るものだと考える。
とはいえ、上記の様々な問題点を見ると、時代の流れにはあらがえないということだろうか。
致し方なし、である。
1975年度
1 松本清張 3億27万円
2 司馬遼太郎 2億3512万円
3 五木寛之 2億2587万円
4 石川達三 1億3422万円
5 遠藤周作 1億3503万円
6 横溝正史 1億1547万円
7 有吉佐和子 1億1474万円
8 山岡荘八 1億1259万円
9 宇野鴻一郎 1億656万円
10 井上ひさし 9484万円
この年のランキングを見てみると、松本清張が圧倒的な所得を得ていたことがわかる。彼の作品は多くの読者に支持され、印税収入が非常に高かったのだろう。
司馬遼太郎や五木寛之も、歴史小説や文学作品で多くのファンを持ち、安定した収入を得ていたことが伺える。
印税とは、作家が自らの作品の販売によって得られる収入のことを指す。1975年当時、今より多くの作家たちが自らの作品が売れることで、安定した生活を送っていたようだ。特に松本清張や司馬遼太郎のような著名な作家は、印税だけでなく、映画化やドラマ化による収入も得ていたことだろう。
作家たちの印税は、作品の売上に応じて変動するが、人気作家の場合、数億円に達することも珍しくなかった。特に松本清張は、芥川賞作家ながら社会派ミステリー小説の巨匠となり、彼の作品は今も多くの読者に愛され続けている。
ちなみにこの時代の高額所得者(8000万円以上の所得者)は、所得の75%を所得税として納めていた。もちろん節税などの対策をする者も多かっただろうが、単純計算すると、松本清張の納税額は2億2000万円以上。8000万円弱しか手元に残らないということになる。
1976年度
1 松本清張 3億3461万円
2 司馬遼太郎 3億3032万円
3 横溝正史 3億2825万円
4 五木寛之 1億4125万円
5 森村誠一 1億1042万円
6 城山三郎 1億654万円
7 宇野鴻一郎 1億447万円
8 石川達三 1億237万円
9 遠藤周作 9949万円
10 高木彬光 8799万円
とにかくこの時代は、日本の文芸界が非常に活気に満ちていた。松本清張のミステリー小説や、司馬遼太郎の歴史小説は、広く一般に受け入れられていた。彼らは単なる文筆家にとどまらず、文化的なアイコンとしての地位を確立していた。
また、横溝正史の作品も、当時の推理小説ブームを牽引した。彼の作品は、今でも多くのファンに愛されている。
作家たちは、単に高額な所得を得ていただけでなく、文化人・知識人として大きな影響力を持つ存在でもあった。
1977年度
1 森村誠一 6億2264万円
2 横溝正史 4億416万円
3 松本清張 3億545万円
4 司馬遼太郎 2億1785万円
5 新田次郎 1億7766万円
6 五木寛之 1億5034万円
7 城山三郎 1億2768万円
8 梶原一騎 1億1504万円
9 高木彬光 1億564万円
10 池波正太郎 1億470万円
1977年、文芸作品は相変わらず非常に売れており、多くの作家が莫大な印税を得ていた。特にこの年のトップは森村誠一で、なんと6億2264万円もの所得を記録している。これは今でも驚異的な数字であり、彼の作品がすさまじい勢いで人々に支持されていたことを物語っている。代表作『人間の証明』が映画化されて大ヒットしたことも追い風となった。
次に横溝正史が4億416万円、松本清張が3億545万円と続き、彼らの作品もまた多くの読者に愛されていた。当時は、作家たちの影響力が高まっただけでなく、読者の期待も高まっていた良き時代であったのだ。
そして『巨人の星』『あしたのジョー』といった漫画(劇画)の原作者として名高い梶原一騎がランクインしているのも興味深い。
1978年度
1 森村誠一 4億3139万円
2 松本清張 3億1856万円
3 西村寿行 2億3487万円
4 司馬遼太郎 1億8863万円
5 五木寛之 1億7058万円
6 横溝正史 1億6815万円
7 新田次郎 1億5140万円
8 有吉佐和子 1億4812万円
9 池波正太郎 1億3872万円
10 梶原一騎 1億3240万円
前年同様に森村誠一が圧倒的な収入を得ていることがわかる。この年も『野生の証明』が映画化されるなど、幅広いメディア展開がなされていた。
松本清張や西村寿行、司馬遼太郎もそれぞれのジャンルで確固たる地位を築いており、彼らの作品は日本文学の重要な一部となっている。
森村誠一や松本清張の作品は、当時の社会問題を鋭く描写し、多くの人々に影響を与えた。特に、松本清張の作品は、推理小説としての面白さだけでなく、社会の暗部を暴く内容が多く、読者に深い印象を残した。
1979年度
1 西村寿行 2億6932万円
2 大藪春彦 2億3452万円
3 五木寛之 2億2013万円
4 高木彬光 1億9313万円
5 松本清張 1億7942万円
6 司馬遼太郎 1億7085万円
7 池波正太郎 1億5487万円
8 横溝正史 1億5360万円
9 花登匿 1億5085万円
10 半村良 1億4451万円
西村寿行が、この年1位を獲得した。彼の作品には緊迫感とリアリティがあり、多くの読者を魅了。特に、サスペンスや冒険ものが高い人気を誇っていた。
2位の大藪春彦は、特にハードボイルドな作品で知られている。彼の作品は、男の世界を色濃く描いたものが多く、人気を博した。
池波正太郎は、時代小説を中心に多くの作品を残している。彼の描く江戸時代の物語は、今でも読者に深い感動を与えている。
1980年度
1 司馬遼太郎 3億102万円
2 五木寛之 2億7570万円
3 西村寿行 2億5017万円
4 松本清張 2億4733万円
5 大藪春彦 2億29万円
6 井上靖 1億6792万円
7 森村誠一 1億4227万円
8 遠藤周作 1億2251万円
9 池波正太郎 1億1704万円
10 小松左京 1億1435万円
司馬遼太郎が3億円以上の所得を得て1位。彼の作品は歴史小説が多く、特に『竜馬がゆく』などは多くの読者に支持された。司馬は、新しく大作を執筆することになると、東京・神田の古書店街で作品の参考資料を買いあさった。それは軽トラックの荷台いっぱいになるほどだったという。
五木寛之や松本清張も変わらず人気があり、彼らの作品は映像化されることも多かったため、収入が高かったのも納得である。
1981年度
1 司馬遼太郎 2億9193万円
2 石坂洋次郎 2億1670万円
3 西村寿行 1億8746万円
4 松本清張 1億7853万円
5 横溝正史(故人)1億4582万円
6 五木寛之 1億4264万円
7 森村誠一 1億4254万円
8 勝目梓 1億4065万円
9 笹川左保 1億3832万円
10 遠藤周作 1億2961万円
司馬遼太郎が圧倒的な収入を得ていることがわかる。「国民的作家」が売り上げの面で絶好調の時期だ。彼の作品が持つ魅力は、単なる物語の面白さだけでなく、日本の歴史を独自の視点で深く掘り下げるところにもにあるだろう。
石坂洋次郎もまた、非常に人気のある作家であり、彼の作品は多くの読者に感銘を与えた。西村寿行や松本清張も当然、独自のスタイルで多くのファンを持っていた。
1977年からこの年まで、高額所得作家のトップ10が全員1億円以上を稼いでいたことは驚異的である。
1982年度
1 松本清張 3億1489万円
2 赤川次郎 2億7041万円
3 西村寿行 2億5946万円
4 司馬遼太郎 2億5731万円
5 森村誠一 2億4362万円
6 笹沢左保 1億7016万円
7 渡辺淳一 1億4707万円
8 大藪春彦 1億3650万円
9 池波正太郎 1億1935万円
10 井上ひさし 1億1861万円
11 平岩弓枝 1億1492万円
12 田辺聖子 1億886万円
13 西村京太郎 1億720万円
14 黒岩重吾 1億158万円
15 遠藤周作 1億131万円
16 筒井康隆 9823万円
17 五木寛之 9800万円
18 梅原猛 9545万円
19 井上靖 9295万円
20 平井和正 9003万円
相変わらず松本清張は人気で、3億1489万円という高額収入を記録。清張作品は、ただの娯楽にとどまらず、社会問題を扱った深い内容が多く、読者に強いメッセージを伝えている。
注目すべきは、赤川次郎だ。彼は2億7041万円の収入を得ており、人気作家としての地位を確立した。赤川次郎の作品は、軽妙なタッチで描かれるミステリーが特徴で、以後、幅広い読者層に支持されることになる。彼の作品は特に若い世代に人気となり、映像化などのメディアミックスがされることも多く(前年に、薬師丸ひろ子主演の映画『セーラー服と機関銃』が大成功)、その影響力は年々増していく。
1983年度
(この年より納税額に変更)
1 赤川次郎 4億838万円
2 松本清張 1億9201万円
3 司馬遼太郎 1億5360万円
4 西村寿行 1億2528万円
5 西村京太郎 1億969万円
6 笹沢左保 1億733万円
7 渡辺淳一 1億117万円
8 平岩弓枝 9085万円
9 池波正太郎 8353万円
10 筒井康隆 8005万円
11 森村誠一 7933万円
12 田辺聖子 6815万円
13 勝目梓 6167万円
14 大藪春彦 6043万円
15 平井和正 5800万円
16 中島梓 5155万円
17 和久峻三 5149万円
18 斉藤栄 5100万円
19 三浦綾子 5085万円
20 遠藤周作 5026万円
赤川次郎が、ついにこの年のランキングで堂々の断トツ1位を獲得した。彼の作品は、ミステリーや恋愛小説など多岐にわたり、幅広い読者層に支持された。赤川次郎の成功は、彼の新鮮なスタイルとストーリーテリングに起因していると言えるだろう。
1983年は、日本のバブル経済の前夜とも言える時代。この時期、人々の消費意欲が高まり、出版業界も活況を呈していた。作家たちは、様々なジャンルで多くの作品を発表し、読者の支持を受けていた。特に、ミステリーや歴史小説は高い人気を誇り、その波に乗る形で作家たちは高収入を得ていたと言える。
1984年度
1 赤川次郎 6億3836万円
2 西村京太郎 1億8276万円
3 司馬遼太郎 1億7432万円
4 松本清張 1億7240万円
5 西村寿行 1億5615万円
6 渡辺淳一 1億481万円
7 笹沢左保 9941万円
8 森村誠一 8300万円
9 平岩弓枝 8157万円
10 片岡義男 8064万円
11 池波正太郎 7429万円
12 栗本薫(中島梓) 7357万円
13 田辺聖子 7104万円
14 筒井康隆 6714万円
15 斉藤栄 6251万円
16 夏樹静子 5884万円
17 遠藤周作 4774万円
18 柳田邦夫 4521万円
19 大藪春彦 4316万円
20 和久峻三 4251万円
赤川次郎の圧倒的な存在感が際立つ。念のために繰り返すが、所得が6億円なのではなく、納税額が6億円なのだ。この「赤川次郎最強の時代」はまだ続く。
他の作家はかなり差をつけられた格好となったが、それでも納税額が1億円を超える者が多く、出版業界の盛況は続いている。
1985年度
1 赤川次郎 7億5709万円
2 西村京太郎 2億4789万円
3 池波正太郎 1億9872万円
4 松本清張 1億4105万円
5 西村寿行 1億3745万円
6 司馬遼太郎 1億2567万円
7 栗本薫(中島梓) 9717万円
8 渡辺淳一 9333万円
9 森村誠一 8665万円
10 笹沢左保 8061万円
11 平岩弓枝 6712万円
12 斉藤栄 6459万円
13 田辺聖子 6059万円
14 夢枕獏 5971万円
15 遠藤周作 5560万円
16 大藪春彦 5131万円
17 和久峻三 5073万円
18 高城肇 5007万円
19 平井和正 4355万円
20 胡桃沢耕史 4300万円
所得税の最高税率が75%から70%に下がったとはいえ、高額所得者にとっては、まだかなりの負担を強いられた時代である。
赤川次郎がついに納税額を7億円台に乗せてきた。所得はゆうに10億円を超えるということになる。「一体どうなってるんだ?」と言いたいところだが、「こうなっている」としか言い様がない。社会的な大ブーム・時代を作る、という事象を数字で証明したということだ。
2位以下の作家も堅調に高所得を得ているわけだが、赤川次郎があまりに突出していて、少々その凄さが伝わりづらくなっている。
1986年度
1 赤川次郎 8億6100万円
2 西村京太郎 2億9662万円
3 司馬遼太郎 1億4368万円
4 渡辺淳一 1億4036万円
5 西村寿行 1億1809万円
6 松本清張 1億914万円
7 遠藤周作 1億621万円
8 菊地秀行 1億458万円
9 栗本薫(中島梓) 1億430万円
10 池波正太郎 9919万円
11 畑正憲 8904万円
12 田辺聖子 7290万円
13 笹沢左保 6774万円
14 夢枕獏 6769万円
15 胡桃沢耕史 6664万円
16 斉藤栄 6452万円
17 平岩弓枝 6064万円
18 井上ひさし 6006万円
19 山村美紗 5781万円
20 森村誠一 5370万円
ついに赤川次郎は納税額が8億円を超えた。この数字は、長者番付が発表されていた時代のなかで、作家部門としては空前にして絶後。2004年度をもって発表が廃止されるまで破られることのない記録である。
2005年度以降、この数字を超えた作家はいるのだろうか? 思いを巡らせてみたが、東野圭吾や村上春樹などの名前を浮かべても、さすがにこの年の赤川次郎に勝つことは難しいのではないだろうか。
9位の作家まで、1億円以上を納税しているすさまじい時代だが、赤川次郎のすさまじさのせいで他作家はまったく目立つことができない。良いことなのか悪いことなのかはそれぞれの考え方次第だろう。
1987年度
1 赤川次郎 6億4860万円
2 西村京太郎 2億8468万円
3 司馬遼太郎 1億4980万円
4 西村寿行 1億3190万円
5 池波正太郎 1億257万円
6 菊地秀行 9533万円
7 田辺聖子 9531万円
8 渡辺淳一 9331万円
9 松本清張 8866万円
10 栗本薫(中島梓)8437万円
11 山村美紗 7536万円
12 遠藤周作 7080万円
13 胡桃沢耕史 6404万円
14 椎名誠 6390万円
15 安部譲二 6255万円
16 笹沢左保 6157万円
17 斉藤栄 6111万円
18 森村誠一 6060万円
19 新井素子 5576万円
20 平岩弓枝 5482万円
何かと問題を残した日本経済のバブル時代だが、出版業界も例に漏れずバブル期だった。ランキング20位でも納税額が5000万円を余裕で超えている。
そして、前年よりは数字が落ちたものの、赤川次郎の独走はいつまで続くのだろうか、とため息が出るくらいの稼ぎっぷり。
「作家は稼げる」という、今となっては甘美な言葉が現実的な時代だった。
1988年度
1 赤川次郎 5億8253万円
2 西村京太郎 2億8833万円
3 村上春樹 2億5369万円
4 池波正太郎 1億3898万円
5 西村寿行 1億72万円
6 司馬遼太郎 9920万円
7 菊地秀行 8673万円
8 松本清張 7903万円
9 山村美紗 7376万円
10 斉藤栄 7018万円
11 平岩弓枝 6957万円
12 遠藤周作 6931万円
13 田辺聖子 6711万円
14 笹沢左保 6327万円
15 藤川桂介 6235万円
16 渡辺淳一 6079万円
17 藤島泰輔 5918万円
18 椎名誠 5913万円
19 門田泰明 5871万円
20 森村誠一 5598万円
昭和最後のランキングでも赤川次郎が圧倒的な存在感を見せつけて堂々の1位。
その一方、村上春樹が純文学作家としては異例の納税額2億5000万円で第3位に登場した。「昭和最後のベストセラー」と言われる『ノルウェイの森』がもたらした印税収入によるものだろう。村上春樹は、赤川次郎のような大量生産タイプではなく、入魂の長編文学作品を数年に一度発表して、ときに1作で数百万部を売るといったスタイルを築いていく。
赤川次郎と村上春樹はともに巨大な才能の持ち主だが、その方向性は完全に真逆といって良かろう。
1989年度
1 赤川次郎 4億6173万円
2 西村京太郎 2億6262万円
3 吉本ばなな 2億3699万円
4 村上春樹 1億5111万円
5 司馬遼太郎 1億4012万円
6 池波正太郎 1億920万円
7 西村寿行 9508万円
8 菊地秀行 8208万円
9 渡辺淳一 7829万円
10 藤島泰輔 7197万円
11 藤川佳介 7190万円
12 笹沢左保 6656万円
13 遠藤周作 6637万円
14 山村美紗 6485万円
15 斉藤栄 6011万円
16 内田康夫 5759万円
17 森村誠一 5718万円
18 椎名誠 5671万円
19 胡桃沢耕史 5526万円
20 田中芳樹 5103万円
平成に突入しても、赤川次郎の一人勝ちといった状態は続いている。
この年も純文学作家が上位に登場する。吉本ばななだ。『キッチン』をはじめとする多くの作品が日本国内のみならず、海外でも高い評価を得た。
1990年度
1 赤川次郎 3億7980万円
2 西村京太郎 2億4497万円
3 司馬遼太郎 1億1140万円
4 松本清張 8736万円
5 菊地秀行 8622万円
6 西村寿行 8185万円
7 田中芳樹 7944万円
8 内田康夫 7927万円
9 渡辺淳一 7572万円
10 斉藤栄 7266万円
11 門田泰明 6705万円
12 笹沢左保 6618万円
13 山村美紗 6578万円
14 遠藤周作 6239万円
15 椎名誠 6127万円
16 落合信彦 5929万円
17 森村誠一 5801万円
18 藤島泰輔 5760万円
19 村上春樹 5690万円
20 田辺聖子 5404万円
ピーク時と比べれば、納税額はかなり落ちた赤川次郎だが、それでも2位に1億円以上の差をつけて相も変わらず首位をキープ。大ブームが去っても、過去の作品がかなりたまっている状態なので、その蓄積がもたらす印税収入はかなりのものだろう。
ところで「鉄道ミステリーの帝王」西村京太郎が、ここまで7年連続でランキング2位である。これも実は恐ろしい記録であり、2位を長きにわたって維持するのは難しいことだ。西村京太郎の連続2位記録がどこまで続くのかも、大変興味深い。
1991年度
1 赤川次郎 3億5512万円
2 西村京太郎 2億5489万円
3 内田康夫 1億7140万円
4 司馬遼太郎 9101万円
5 椎名誠 8577万円
6 山村美紗 8404万円
7 菊地秀行 8325万円
8 遠藤周作 8171万円
9 落合信彦 7378万円
10 笹沢左保 7290万円
11 渡辺淳一 6643万円
12 田中芳樹 6508万円
13 森村誠一 6414万円
14 斉藤栄 6003万円
15 山崎豊子 5315万円
16 橋本治 5294万円
17 門田泰明 5062万円
18 陳舜臣 4933万円
19 豊田行二 4794万円
20 松本清張 4393万円
この年も赤川次郎・西村京太郎のワンツートップは変わらず。
少しずつではあるが、ランキング全体の納税額が減少傾向になっている。
なお、長らく長者番付の常連だった松本清張は、この年、20位での登場をもって最後となる。1992年に多くの読者に惜しまれつつ亡くなったのだ。
1992年度
1 赤川次郎 3億5093万円
2 西村京太郎 2億3698万円
3 内田康夫 1億8649万円
4 司馬遼太郎 1億1944万円
5 菊地秀行 7890万円
6 田中芳樹 7650万円
7 渡辺淳一 7318万円
8 山村美紗 7261万円
9 豊田行二 7187万円
10 辺見じゅん 7155万円
11 森村誠一 6530万円
12 斉藤栄 5902万円
13 椎名誠 5728万円
14 荒巻義雄 5486万円
15 落合信彦 5244万円
16 津本陽 5233万円
17 門田泰明 4846万円
18 笹沢左保 4822万円
19 平岩弓枝 4720万円
20 宮本輝 4673万円
ついに赤川次郎が驚異の10連覇である。
そして西村京太郎も連続2位の記録を続けている。
ランキング全体の顔ぶれを見ると、少々マンネリ・硬直化の印象だ。小説の読者は好みの作家が出す作品を読み続ける傾向があるので、ある程度は無理からぬことだろうか。
1993年度
1 赤川次郎 3億2943万円
2 西村京太郎 2億2168万円
3 内田康夫 1億7412万円
4 司馬遼太郎 9969万円
5 山村美紗 8624万円
6 津本陽 7765万円
7 森村誠一 7689万円
8 荒巻義雄 7680万円
9 菊地秀行 6970万円
10 斉藤栄 6650万円
11 宮尾登美子 6384万円
12 藤沢周平 6351万円
13 椎名誠 6050万円
14 童門冬二 5686万円
15 渡辺淳一 5365万円
16 志茂田景樹 5272万円
17 豊田行二 5224万円
18 遠藤周作 5029万円
19 平岩弓枝 4979万円
20 門田泰明 4777万円
赤川・西村の2強時代はさらに続いている。まだ売れている。
16位の志茂田景樹は、もちろん小説の売れ行きは良かったが、当時はテレビのバラエティ番組出演なども多かったので、その出演料も納税額に反映されているだろう。
遠藤周作はノーベル文学賞を獲れる逸材とも言われたが、大衆向けの作品も多く手がけ、高い納税額につながっている。
1994年度
1 赤川次郎 3億2209万円
2 西村京太郎 2億2500万円
3 内田康夫 1億7700万円
4 司馬遼太郎 1億287万円
5 森村誠一 8864万円
6 斉藤栄 7957万円
7 菊地秀行 7586万円
8 荒巻義雄 6786万円
9 椎名誠 6694万円
10 津本陽 6449万円
11 山村美紗 5991万円
12 藤沢周平 5986万円
13 大江健三郎 5092万円
14 群ようこ 4859万円
15 豊田行二 4852万円
16 五木寛之 4833万円
17 田中芳樹 4686万円
18 遠藤周作 4443万円
19 志茂田景樹 4438万円
20 門田泰明 4118万円
この年も赤川次郎が圧倒的な納税額でトップ。西村京太郎も安定の2位。
特筆すべきは、13位の大江健三郎。純文学の世界でも比較的難解とされる作品を書く大作家だが、1968年の川端康成に続くノーベル文学賞を受賞した。この高い納税額は、ノーベル賞の莫大な賞金や、ノーベル賞効果により過去作品が売れたことによるものと考えられる。とにかく、日本文芸界にとって大変な慶事であった。
1995年度
1 赤川次郎 2億6086万円
2 西村京太郎 2億3132万円
3 内田康夫 1億6237万円
4 森村誠一 9455万円
5 神坂一 8383万円
6 斉藤栄 7045万円
7 菊地秀行 7036万円
8 山村美紗 6730万円
9 五木寛之 6649万円
10 田中芳樹 6368万円
11 宮尾登美子 6282万円
12 椎名誠 6030万円
13 津本陽 5938万円
14 宮城谷昌光 5834万円
15 大江健三郎 5710万円
16 群ようこ 4981万円
17 渡辺淳一 4588万円
18 宮本輝 3985万円
19 宮部みゆき 3951万円
20 井沢元彦 3915万円
ついに赤川次郎が13年連続首位。昭和末期から平成初頭まで「最も稼ぐ作家」として君臨し続けたことは、作品に対する評価とは別に、大いに賞賛されるべきことだ。ただ、2位の西村京太郎がかなり肉薄してきている。そろそろ王者が交代するのか…? という流れになった。
19位には、平成時代のヒットメーカーとなる宮部みゆきが登場している。
徐々に世代交代の波が来た感がある(西村京太郎は赤川次郎より年上だが)。
1996年度
1 内田康夫 1億4657万円
2 西村京太郎 1億3551万円
3 森村誠一 8222万円
4 神坂一 8010万円
5 津本陽 7450万円
6 渡辺淳一 7327万円
7 田中芳樹 6568万円
8 椎名誠 6191万円
9 石原慎太郎 6096万円
10 斉藤栄 5933万円
11 宮部みゆき 5291万円
12 菊地秀行 5017万円
13 五木寛之 4960万円
14 群ようこ 4112万円
15 童門冬二 3976万円
16 宮本輝 3973万円
17 荒巻義雄 3860万円
18 赤川次郎 3805万円
19 平岩弓枝 3795万円
20 宮城谷昌光 3696万円
思わぬ伏兵が1位に、と言ったら失礼だろうか。赤川次郎の連覇を阻んだのは内田康夫である。西村京太郎ではなかった。
内田康夫とて、生涯で累計1億部の売り上げを達成した超売れっ子作家なので不自然なトップ獲得ではない。しかし驚く結果ではある。
もっと驚くのは、前年に2億6000万円以上を納税して首位だった赤川次郎が、この年は3805万円の納税にとどまり、18位にまで順位を落とした事実だ。
これには理由があり、赤川次郎がバブル期に購入した自宅の価値が大きく下落し、売却した際にかなりの損失があったらしい。それにより諸々の税金が免除されたとか。こういう理由で記録が途絶えるとは、多くの人にとって想定外だったろう。
西村京太郎は、またもや2位である。
1997年度
1 赤川次郎 2億7760万円
2 渡辺淳一 2億2675万円
3 西村京太郎 2億1257万円
4 内田康夫 2億827万円
5 村上春樹 9244万円
6 浅田次郎 9187万円
7 森村誠一 8611万円
8 林真理子 6980万円
9 宮部みゆき 6942万円
10 津本陽 6752万円
11 神坂一 6336万円
12 菊地秀行 5817万円
13 群ようこ 5298万円
14 斉藤栄 5147万円
15 星野富弘 5103万円
16 田中芳樹 4981万円
17 平岩弓枝 4632万円
18 高村薫 4439万円
19 椎名誠 4293万円
20 大沢在昌 4247万円
何事もなかったかのように、しれっと赤川次郎が首位に返り咲いている。赤川作品の大ブームは去っていたが、さすがの底力を見せてくれた。
かと思いきや、西村京太郎が3位になってしまった。ランキングが一時期、硬直していたが、やや流動的になってきた。
2位は文壇の大御所・渡辺淳一。彼は長らく、主に恋愛を題材にした作品のヒットによってランキングの常連ではあったが、この年は一気に納税額が上がり2億円以上。なんといっても社会的ブームになった『失楽園』の大ヒットが要因だろう。余談だが『失楽園』が日本経済新聞に連載されたせいで、日本の経済が本格的に凋落した…というジョークが交わされたりもした。実際にそうなのかは不明である。
1998年度
1 西村京太郎 2億5196万円
2 赤川次郎 1億9087万円
3 鈴木光司 1億4207万円
4 宮部みゆき 1億1679万円
5 内田康夫 1億594万円
6 浅田次郎 1億474万円
7 五木寛之 7780万円
8 森村誠一 7128万円
9 宮城谷昌光 6738万円
10 神坂一 5612万円
11 菊地秀行 5495万円
12 群ようこ 5357万円
13 渡辺淳一 4998万円
14 星野富弘 4962万円
15 椎名誠 4927万円
16 斉藤栄 4399万円
17 田中芳樹 4285万円
18 筒井康隆 4220万円
19 北方謙三 3905万円
20 河合隼雄 3563万円
「万年2位」のような座から、ついに西村京太郎がトップに躍り出た。「十津川警部シリーズ」は、駅の売店やコンビニにて、ほぼ確実に見かけるようになっていた。西村は、若かりし頃に松本清張の作品を読んで「これくらいなら自分でも書ける」と思ったそうだ。それが若気の至りにとどまらず、きちんと結果を残すところは見事と言うほかない。
赤川次郎が本当の意味で王座陥落したのはこの年である。
3位は鈴木光司。『リング』の大ヒットは映像化も相まって記録的なものとなり、鈴木は、ジャパニーズ・ホラーの旗手として時代の寵児となった。
宮部みゆきもミステリー小説『理由』の直木賞受賞を機に、本格的にベストセラー作家の仲間入りを果たして、億を超える納税を成し遂げた。
1999年度
1 西村京太郎 1億6519万円
2 内田康夫 1億3929万円
3 宮部みゆき 1億1492万円
4 鈴木光司 7656万円
5 浅田次郎 7315万円
6 五木寛之 6320万円
7 森村誠一 6199万円
8 桐生操(堤幸子) 5640万円
9 桐生操(上田加代子) 5610万円
10 星野富弘 5246万円
11 村上春樹 4664万円
12 津本陽 4329万円
13 赤瀬川源平 4015万円
14 山崎豊子 3940万円
15 東野圭吾 3803万円
16 菊地秀行 3777万円
17 天童荒太 3718万円
18 桐野夏生 3355万円
19 京極夏彦 3300万円
20 神坂一 3282万円
西村京太郎が首位を走るようになった。社会現象を巻き起こすような作家ではないが、堅調な売れ行きゆえの結果だろう。
それとも他の作家の売り上げが落ちていった結果なのだろうか?
赤川次郎が、いきなり圏外になってしまったが、理由は不明である。
注目したいのは、のちに圧倒的トップ作家になる東野圭吾が15位にランクインしたことだろう。名作との誉れ高い『手紙』でのブレイクによるものだと思われる。
2000年度
1 西村京太郎 1億5603万円
2 赤川次郎 1億1108万円
3 宮部みゆき 7873万円
4 山崎豊子 7559万円
5 内田康夫 7265万円
6 浅田次郎 6758万円
7 五木寛之 6468万円
8 天童荒太 6465万円
9 真保裕一 4153万円
10 北方謙三 3956万円
11 菊地秀行 3886万円
12 夢枕獏 3591万円
13 江國香織 3412万円
14 阿川佐和子 3227万円
15 落合信彦 3188万円
16 津本陽 3176万円
17 星野富弘 3108万円
18 森村誠一 2887万円
19 東野圭吾 2876万円
20 林真理子 2746万円
西村京太郎が3連覇。
そして、またもや何事もなかったかのように、赤川次郎が前年圏外から2位に順位を上げている。これは謎だ。
作品が映像化されるなどの恩恵を受けてか、山川豊子が4位という好成績を達成した。
2001年度
1 西村京太郎 1億5986万円
2 宮部みゆき 1億4566万円
3 赤川次郎 8648万円
4 内田康夫 7743万円
5 浅田次郎 6633万円
6 夢枕獏 5960万円
7 江國香織 4331万円
8 森村誠一 3560万円
9 真保裕一 3444万円
10 東野圭吾 3374万円
11 津本陽 3180万円
12 北方謙三 2789万円
13 林真理子 2740万円
14 五木寛之 2596万円
15 渡辺淳一 2473万円
16 柳美里 2428万円
17 平岩弓枝 2399万円
18 山口洋子 2169万円
19 阿川佐和子 2082万円
20 曽野綾子 1691万円
西村京太郎が相変わらず強い。
宮部みゆきも大健闘。だが、わずかな差で1位に届かなかった。
ランクインする女性作家が増えた。紫式部などの例を挙げるまでもなく、日本の文芸界は女性が大いに活躍するところであった。その後、社会における様々な理由で活動がしづらくなったりなどしたが、21世紀を迎えて、女性作家が名実ともに上り調子の様相を呈するようになる。
2002年度
1 西村京太郎 1億4029万円
2 宮部みゆき 1億3719万円
3 内田康夫 9732万円
4 村上春樹 9589万円
5 赤川次郎 8234万円
6 北方謙三 5156万円
7 江國香織 4504万円
8 唯川恵 4396万円
9 東野圭吾 4149万円
10 小野不由美 3989万円
11 夢枕獏 3065万円
12 大沢在昌 3053万円
13 林真理子 2960万円
14 五木寛之 2817万円
15 菊地秀行 2772万円
16 辻仁成 2374万円
17 平岩弓枝 2234万円
18 森村誠一 2145万円
19 山口洋子 1817万円
20 渡辺淳一 1813万円
西村京太郎がひたすら首位を走る。この年も宮部みゆきは惜しくも届かず。
昭和から売れ続ける作家の中に、少しずつではあるが新しい才能が食い込んできているのが分かる。
その一方、19位・20位あたりだと納税額が1000万円台まで落ち込んでおり、文芸の世界がビジネスとしてはかなり退潮気味になっているのがうかがえる。
2003年度
1 西村京太郎 1億4327万円
2 内田康夫 9547万円
3 養老孟司 6167万円
4 宮部みゆき 6094万円
5 村上春樹 5971万円
6 片山恭一 4794万円
7 浅田次郎 4733万円
8 赤川次郎 4325万円
9 横山秀夫 3857万円
10 東野圭吾 3614万円
11 宮城谷昌光 3227万円
12 夢枕獏 3079万円
13 大沢在昌 2643万円
14 北方謙三 2608万円
15 五木寛之 2277万円
16 津本陽 2185万円
17 菊地秀行 2154万円
18 森村誠一 2116万円
19 江國香織 1828万円
20 阿川佐和子 1707万円
ついに、納税額が1億円を超える作家が西村京太郎ただ一人になってしまった。
しかし、ここにランクインしている作家は健闘しているほうであり、新人作家などは、1作目が売れないとその時点で作家生命が終わる時代に。
13位にランクインした大沢在昌は、デビューしてから売れるまで数十冊の出版を要したが、もはやそんな余裕は出版社にないとのことだ。
第3位の養老孟司は、本業は作家ではなく解剖学者。『バカの壁』が、新書として400万部を超える歴史的売り上げを記録しての登場となった。
養老孟司が番付に名を連ねた事実は「売れれば稼げる」ことの証明になった。だが、多くの本が本格的に売れない状況に突入してしまった…。
2004年度
1 西村京太郎 1億4887万円
2 片山恭一 1億4209万円
3 村上春樹 8690万円
4 養老孟司 8649万円
5 浅田次郎 7506万円
6 内田康夫 6745万円
7 宮部みゆき 6344万円
8 赤川次郎 5895万円
9 江國香織 5860万円
10 市川拓司 5654万円
11 山崎豊子 5634万円
12 重松清 3722万円
13 森村誠一 3694万円
14 五木寛之 3116万円
15 夢枕獏 2780万円
16 北方謙三 2657万円
17 平岩弓枝 2368万円
18 渡辺淳一 1999万円
19 大沢在昌 1912万円
20 山口洋子 1796万円
最後の長者番付発表で、西村京太郎が7連覇を達成した。赤川次郎の13連覇時代ほどのインパクトはないものの、大変な記録であること間違いない。
2位は、片山恭一。『世界の中心で、愛を叫ぶ』の作者であり、初版8000部というスタートながら、出版社の営業部員が猛プッシュ、俳優の柴咲コウが絶賛・推薦するに至ると、またたく間に爆発的ヒット。映画化・テレビドラマ化もされて300万部を超えるベストセラー。「セカチュー現象」と呼ばれた。
まとめ
松本清張・司馬遼太郎・森村誠一といった、今は亡きレジェンドたちが活躍した出版黄金期から、赤川次郎の特大ブーム時代、そして西村京太郎が一人勝ちするも出版不況が続くという21世紀初頭までの、作家たちの「カネの事情」を見てきた。
かつては有名俳優や歌手などよりも稼ぎ、影響力があった作家。今や作家の復権は難しい状況にある。
最後の長者番付発表から20年以上が経過したが、出版不況はさらに進み、作家の収入は、さらに落ち込んでいると推察される。おそらくは東野圭吾が一人横綱として君臨するも、多くの作家は厳しい現実に直面しているのではないだろうか。
とはいえ、現在でも売れる作品はそれなりにある。王道的な売れ方も残っているが、過去とは違う媒体(ネット小説など)・ジャンル(なろう系など)でも勝負できる。
何度でも言うが「売れるものは売れる」し、「売れれば稼げる」ということは間違いない。
小説を愛する筆者としては、これからも、新しい巨大な才能が多く出現することを願ってやまない。
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