こんにちは、前健です。
近年は秋になると、作家の村上春樹がノーベル文学賞を獲るのでは!? という期待を胸にハルキスト(村上春樹の熱烈なファン)が集まったり、書店が村上作品フェアの準備をするのが風物詩になっていますね。
さて今回は、近いうちに仮にノーベル文学賞を日本人が受賞するならば誰なのか? という筆者の予測や、過去のノーベル文学賞受賞者・候補者についても言及したいと思います!
【大胆予想】次の日本人ノーベル賞は!?
本命:村上春樹(むらかみ・はるき)
「村上春樹が本命だなんて何を今さら…」と思われる人も多いでしょうが、こればかりは仕方ない! ご容赦ください。
日本の純文学作家のなかで、圧倒的な質と量の作品群・ジャンルの幅広さ・世界的人気・社会派としての顔をも持つ者として頂点に君臨しているのは紛れもない事実。
正直、村上春樹がノーベル文学賞を受賞したとして、異議を申し立てる人はいないでしょう。まあアンチからは色々と言われそうですが…。
むろん村上春樹がノーベル文学賞を獲れない理由としてよく取り沙汰されるのが「これだけ売れてると村上春樹って純文学作家じゃなくて大衆作家では?」とか「売れてるしみんな知ってる作家だから、わざわざ今さらノーベル文学賞あげても意味ないよね」というのが選考委員の共通意識としてある…という噂がまことしやかに語られていることですね。
過去には、政治的発言の多さがノーベル文学賞を遠ざけてるという指摘もなされていました。
しかし一番気になるのは、村上春樹本人が大してノーベル文学賞を欲しがってないようなたたずまいでいることなんですよね…。
対抗:多和田葉子(たわだ・ようこ)
村上春樹と比べると知名度は落ちますが、近年ノーベル文学賞に近づいているのではないかと言われる多和田葉子。
大ベストセラーを生み出すわけではありませんが、作品は拠点とするドイツでの出版はもちろん、ヨーロッパ諸国の言語からアジア諸国の言語でも翻訳・出版されており世界的評価は折り紙付きです。
スウェーデン語・ドイツ語・英語・フランス語で出版されている事実は受賞へのアドバンテージがかなり高いといえるでしょう。
対抗(2):小川洋子(おがわ・ようこ)
『博士の愛した数式』が大ベストセラーになった小川洋子も近年ノーベル文学賞に近い人物と目されています。
日本の現役女性作家としては作品が最も多く翻訳されている人物と言われているようで、しかも多作。
ここ最近のノーベル文学賞受賞者は、やや女性作家を重視する傾向があるようなので、前述の多和田葉子とともに受賞が期待される人物でしょう。
ところで村上春樹・多和田葉子・小川洋子の三人は、いずれも早稲田大学出身ですね。偶然だと思われますが、さすが早稲田…侮れませんね。
穴馬:町田康(まちだ・こう)
ご存じパンク歌手としての活動と並行して傑作・怪作をものにしてきた奇才作家。
「ノーベル文学賞はさすがにないんじゃないの?」という声も聞こえてきそうですが、筆者としては町田康の文学への試みに強く共鳴しています。
王道・覇道、はたまた邪道の作品さえモノにする手腕は、なまなかな作家にはできることではなく、上記の作家とは違う意味合いでノーベル文学賞受賞にふさわしいと思ってしまうのです。
町田康がノーベル文学賞受賞となっても筆者は驚きませんが、世間の多くの人は驚くかもしれませんね。
そもそも近いうちに日本人がノーベル文学賞を獲れるのか??
はっきりとした基準はないとは思いますが、ノーベル文学賞に関しては地政学的な法則が働いている可能性はあります。
単純に言えば「去年の受賞者は欧米人だったから今年は南米あたりの作家にでもしよう」みたいな。
過去を振り返ると、日本人作家のノーベル賞受賞は20年~30年に1人みたいなことになっています。
現在、最後のノーベル文学賞受賞者は大江健三郎で、受賞は1994年。
日本人ノーベル文学賞受賞者がいつ出てもおかしくないのでは…? とかなり期待してしまいます。
ただ、2017年にカズオイシグロがノーベル文学賞を受賞しているんですよね。
カズオイシグロは両親が純然たる日本人で日本の長崎県出身。でも育ちは英国で、国籍も英国…というかなり微妙なポジション。
ノーベル文学賞受賞を与える側のスウェーデン・アカデミーがカズオイシグロを英国人と見なしているか、あくまで日本生まれの日本人として扱っているかは分からなく、まあ筆者としてはどちらでもいいのですが、やっぱり世の中グローバル時代だなあと感じますね。
過去の日本人ノーベル文学賞受賞者
川端康成(かわばた・やすなり 1899~1972)
1968年受賞。
選考理由「日本人の心の真髄をすぐれた感受性をもって表現し、世界の人々に深い感銘を与えたため」
代表作『伊豆の踊子』『雪国』『眠れる美女』など
・後述する三島由紀夫を抑えての受賞。川端いわく「私の受賞は三島君のおかげ」といった発言があるが…?
ともあれ日本人読者でも分かりづらい文章表現をスウェーデン・アカデミーはしっかり理解した上での授賞だったのだろうか。
受賞記念講演のタイトルは『美しい日本の私』。日本文学研究者でさえ翻訳に難儀した複雑かつ美意識あふれる文は書籍化されているので一読の価値あり。
大江健三郎(おおえ・けんざぶろう 1935~)
1994年受賞。
選考理由「詩趣に富む表現力を持ち、現実と虚構が一体となった世界を創作して、読者の心に揺さぶりをかけるように現代人の苦境を浮き彫りにしている」
代表作『飼育』『個人的な体験』『万延元年のフットボール』など
・これまた日本文学界の大家でありながら日本人による読了率が低い作家の受賞。受賞記念講演のタイトルは『曖昧な日本の私』。あえて川端のパロディをやってのける。
…世界における日本文学への評価の高さに比して2人のみの受賞というのは若干寂しいですが、長らく白人至上主義の選考が続いたので仕方ないかもしれませんね。
主な過去のノーベル文学賞候補者
西脇順三郎(にしわき・じゅんざぶろう 1894~1982)
詩人。シュールレアリスムの手法を使った詩により、1960年代はほぼ毎年ノーベル文学賞候補となるも、翻訳作品の不十分さや、日本文学研究者である某米国人からの低評価などによって受賞に至らず。
谷崎潤一郎(たにざき・じゅんいちろう 1886~1965)
「大谷崎」とも呼ばれる文豪。彼の書く小説は「悪魔主義」と呼ばれ、俗にも雅にも通じた作風は現在でも極めて高い評価を受けている。
代表作は『痴人の愛』『細雪』など。
ノーベル文学賞は7回候補になり、そのうち2回は最終候補に残るも、受賞に至らず死去(ノーベル賞は原則として故人には与えられない)。
三島由紀夫(みしま・ゆきお 1925~1970)
昭和を代表する大スター作家。海外でも高い評価を得る。
小説にとどまらず、戯曲家・政治活動家としても有名。代表作は『仮面の告白』『金閣寺』、『豊穣の海』シリーズなど多数。自衛隊市ヶ谷駐屯地にて割腹自殺。
ノーベル文学賞受賞に最もふさわしいという評価を得ていたが、結果は師匠の川端康成が受賞。その後、三島はますます政治活動に力を入れて最終的に自害。川端も徐々に心身を弱らせ死去(ガス自殺とされる)。
日本文学者のドナルド・キーンいわく「ノーベル賞が三島と川端を殺した」。
安部公房(あべ・こうぼう 1924~1993)
昭和から平成にかけて活躍した作家。前衛的作風は唯一無二。
三島由紀夫が資本主義国家読者からの絶賛を受けたのに対し、安部は社会主義国家の読者から大きな支持を受ける。
代表作に『砂の女』『箱男』『密会』など。
大江健三郎は安部を「カフカやフォークナーと並ぶ世界最大の作家」と激賞。
69年という短い人生だったが、あと数年長く生きていれば大江健三郎ではなく安部公房がノーベル文学賞を受賞していたと言われる。
最後に
文学者はノーベル文学賞を受賞してもしなくてもその本質的価値が変わるわけではありませんが、世間では一種のイベントとして大きな注目を集めるのもまた事実です。
純文学業界隆興のためにも日本人がノーベル文学賞受賞を果たすことを願わずにはいられません。
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